なずなの時に



 病を得てからは、那須君が死を口にすることはほとんどなかった。

 少し先の未来のことも、話すことはなかった。

 生きる前提だったのと、治療の苦しさでいっぱいだったのと、他に考えたいことがあったのと、考えても仕方がないのと、あと、どんな気持ちだったのだろう。

 (再発前だったと思うが)いつだったか、「なずなよりは長生きせんといかんな」と言ったことがあった。なんだかそれも短い気がして、でも「そんな短いの」とも言えず、その時は「うん」としか答えられなかった。

 でも亡くなる1ヶ月前に自宅療養になったあと、一度だけ未来に言及したことがあった。
 彼は、なずなを撫でながら、「なずなが死ぬときに、(あーちゃんの)側にいてあげられなくてごめん」と泣いた。
 唐突に言われたこともあり、その時の私は(え?謝るとこ、そこなん…?)と腑に落ちない気持ちもありつつ、そんなことで心配を掛けたくなくて「大丈夫…」とだけ言って、一緒になずなを撫でていた。

 今日は彼の誕生日。