どっと疲れた夜に聴くのは
耕介は日々、様々な音楽を聴いていた。
トイレとお風呂場以外では、朝起きた時から就寝時まで
必ず音楽をかけていた。
耕介はすぐに寝付くので、音楽をわざわざかけなくても…と密かに思っていたけれど、
毎晩、じっくり選んだ音楽を聴きながら寝ていた。
静かな曲ばかりではなく、よくこれで寝られるな、という音楽もあった。
そんなふうに長年過ごして気がついたこと。
耕介が言葉を尽くして説明しても、相手に通じなかったり、
なんでこの仕事をワシがするねん、という徒労感があったり、
そんな、どうしようもなく気持ちが疲れている夜は、
必ずと言って良いほど、『憂歌団』をかけていた。
高校時代によく憂歌団のライブに行っていたらしい。
憂歌団は、ライブの途中にメンバーがトイレに行って、
それをファンが野次るなど、
力の入らなさ、ファンとの近さが堪らないバンド。
長男の耕介には、「アニキ達の悪ふざけ」が痛快だったのだろう。
疲れている夜は、そんなアニキ達の曲が流れる。
あのダミ声で、♪いやんなった~♪と聞こえてくると
(あぁ、今日はクタクタなんだな…)と私にも分かる。
そういえば、イヤイヤ頑張った仕事がようやく終わって、
もうどうでも良くなった夜にも憂歌団を聴いていた。
年に3回くらいか。
がんばるモードから、ふざけるモードに切り替わる
スイッチみたいな音楽だったのかな、と思う。