『麻雀はダメ』




高校時代の恩師、八木先生が那須君に言った。

「パチンコはいいけど、麻雀はダメ」


八木先生は授業のない時に、ふらりとパチンコ屋に行き、

教職員室の机の引き出しには、景品のお菓子がいつも入っていた。

お気に入りの生徒には、そのお菓子をこっそりくれたりする。


高校を卒業して、先生と一緒に飲みに行けるようになった時も、

帰りに「パチンコ屋に寄っていく!那須もあーちゃんもやるように!」と連れて行かれたことがあった。

百円で玉を買い、一瞬で無くなる。

それでよし、という顔で、先生はさっと店を出る。



では、八木先生も大学時代に随分やっていたという麻雀が、なぜダメなのか?

麻雀は人と一緒にするから、自分がやめたくなっても やめられない。

だからするな、と説明された。



那須君は音楽が好きで、新聞配達のお金を貯めて買ったギターをずっと弾いていた。でもバンドを組むことは無かった。


運動も、小学生の頃は野球に夢中で、中学では卓球部。大学の授業でやったサッカーも、位置取りが上手くて敵に嫌がられていたらしい。ボーリングやスキーも上手かった。

でもずっと続けていたのは、1人でジョギング。


私が「バンドをやったり、研究仲間とテニスをやったりすればいいのに!」と言うと、

「八木先生の教えを守っているんや」と笑っていた。